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小スペースで高難度の作業ができる。双腕ロボットのメリットと事例を紹介

小スペースで高難度の作業ができる。双腕ロボットのメリットと事例を紹介

今回は、近年新しく開発されて普及が進んでいる「双腕ロボット」についてご紹介します。人間のような2本のアームを持ち、精密で繊細な作業が繰り返し行えるロボットとして、大手のロボットメーカーが開発を進め、注目を集めているロボットです。そこで今回は、双腕ロボットのメリットやこれまでのロボットとの違い、実際の事例などを具体的に解説します。

産業用ロボットは、得意作業が異なる複数のタイプがあります。今回は、近年新しく開発されて普及が進んでいる「双腕ロボット」についてご紹介します。

人間のような2本のアームを持ち、精密で繊細な作業が繰り返し行えるロボットとして、大手のロボットメーカーが開発を進め、注目を集めているロボットです。

そこで今回は、双腕ロボットのメリットやこれまでのロボットとの違い、実際の事例などを具体的に解説します。

双腕ロボットとは?協働ロボットの特徴を持った新しいロボット

2013年12月の産業用ロボットの導入規制緩和により、ロボットとの接触による危険がない等の条件であれば、人との協働作業を認可するという法律に改正されました。これによって人との協働作業に重点を置いたロボットの開発がさらに進みました。

こうして誕生した産業用ロボットが、2対の腕を持つ「双腕ロボット」です。人と同じほどの作業スペースで、人がこれまで行っていたような繊細かつ複雑な動きを得意としています。通常は一つの作業しか担当できないロボットが主流ですが、双腕を巧みに操ることで、数多くの作業を1台でこなせます。

「人の作業をロボットに置き換える」ことに重点を置いて製作されている双腕ロボットは、「人と協働する」ことが前提とされており、安全性の高さも追及されています。

双腕ロボットのメリットは「人と同じように運用できること」

双腕ロボットには他の産業用ロボットにはない優れた特徴があります。人と協働できること、人に代わることを追求して繊細な作業が可能な点がポイントであることに加え、ロボットを導入することで、人の採用コストを抑えるというメリットが生まれます。こうした双腕ロボットのメリットをそれぞれ解説します。

人と一緒に作業できる

厚生労働省の告示では、80W以上のモーターを備えたロボットは、安全対策のために柵か囲いを設置し、ロボットの作業半径への人の立ち入りを禁止しています。しかし、双腕ロボットは、万が一誤作動が発生しても被害が小さい80W以下のモーターで製作されています。さらに人感センサーを搭載し、人が近くいるときは作業を止め、離れると再開する機能も備えている機体も多いため、協働する作業員の安全を確保できます。

複雑な作業を同時進行でこなせる

双腕ロボットの大きな特徴は、2本の腕を利用して複雑な作業がこなせることです。片方の腕で作業をこなし、もう1本の腕でワークを支えるなど、作業の安定化を助けます。また、2本の腕で異なる作業を同時進行できます。例えば部品を取り外した後、すぐに取り付けるといった動作が可能です。

他の産業用ロボットはアームが1本しかないため、部品を取り外す、その部品を置く、代わりとなる別の部品を掴む、代わりの部品を取り付けるという工程が必要です。しかし双腕ロボットであれば、部品を取り外した後に残りのアームですぐに別の部品を取り付けることが可能です。こうした複数の作業を行える点は、作業工程が変わった時にも柔軟に対応できるメリットにも繋がります。

導入コストが安い

双腕型ロボットは、2本の腕を持つことでモーターが2倍となり、高価であるという認識を持たれていました。しかし、双腕ロボットは人と同じ生産ラインで稼働し、人の作業を代替できることを目的に開発されているため、機体があまり大きくありません。導入時にロボット専用のラインやシステムを構築せずに済むため、導入のトータルコストは控えめになります。

ロボットの導入コストを検証するときは、長期的な人件費に置き換えて検討するのが一般的です。ロボットには集中力の低下がないため、高い生産性を維持でき、残業代や深夜手当も不要になるなど、人件費を大幅に削減できます。

【事例紹介】双腕を活かして幅広い作業を行える

双腕ロボットは、「人と一緒に作業できる」「複雑な作業を同時進行でこなせる」といった特徴を活かして、どんな作業を行っているのでしょうか。最後に、双腕ロボット活用されている具体的な事例をご紹介します。

ハンドリング・検査・搬送(製造業)

双腕ロボットは、医療製品の凍結真空乾燥の現場で大きな成果を上げました。インフルエンザ診断に使われる薬品の一つ、「イムノクロマト」の製造工程には、抗体を失活させないために凍結真空乾燥が必要とされています。この工程では、多種のチューブと濾紙状のシートを、目視検査しながら試薬を分注する、という複雑な作業を要していました。

その工程に双腕多関節ロボットを導入し、コンベアに流れてきた部材をカメラで認識して、右腕でピッキングと整列配置、左手で試薬の分注と塗布を行うようプログラムしました。 これによって一人の作業員が7.5時間かけて900個もの製品を仕上げていた状況から、たった1時間で同じく900個の製品を仕上げられるようになりました。

引用:ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

袋詰め(製造業)

これまで化粧品業界では、産業用ロボットがあまり導入されていませんでした。取り扱う製品が少量多種であり、製品を変える度にティーチングの手間がかかっていたからです。

その化粧品業界で、双腕ロボットを導入して生産性向上を実現した事例があります。化粧品の袋詰めを行っていた工場は、製品が少量多種であったこと、ビニール袋の取扱いが難しかったことで、自動化に踏み切れませんでした。しかし、双腕ロボットの導入と周辺システムの最適化によって、少量多数の製品をさばきつつ、ビニール袋の作業も自動化に成功しました。その結果、この工程にかかわる作業員を削減し、数量の間違いも減少する副次的な効果も得られたと言います。

引用:ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018

食品加工(サービス業)

中食製造現場の事例をご紹介します。ある工場では、弁当の盛付工程を人海戦術で行っていました。しかし、人手不足の懸念があり、ロボットによる自動化に踏み切りました。食物は金属と違い不定形であり、各食材の認識を個々に行う必要がありました。三次元画像処理に食材を認識させ、並行して双腕ロボットのアームで盛り付けを行いました。

双腕ロボットの導入によって、作業員を13人から10人まで削減できましたが、食材の認識速度に課題が残り、生産量が減少してしまう結果となりました。しかし、過酷な労働を代替させることで作業員満足度の向上や、動作の無駄を削減した上での生産性アップなど、さらなる貢献が期待されています。

引用:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017

人材不足を解決するために。進化を続ける双腕ロボット

人とほぼ同じスペースで作業でき、また、汎用性の高さから徐々に現場で浸透しはじめている双腕ロボット。重い物が持てないデメリットもありますが、それを補って余りあるメリットを有し、各メーカーも開発に力を入れています。

ロボット導入を検討している経営者は、それぞれの産業用ロボットの特徴を正しく理解した上で、課題解決に最適なロボットを選択しましょう。

他の産業用ロボットの特徴は、以下の記事で解説しています。併せてご覧ください。
特徴理解が重要!産業用アームロボット4種類のメリットとデメリット

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