
結果と要因の因果関係を視覚化する「特性要因図」とは
特性要因図とは、ある結果と要素の因果関係を視覚的にまとめたものであり、「ある結果は、どのような要素によってもたらされたのか」を明確にしてくれます。「石川ダイアグラム」「魚の骨図」「CE図」という別称もありますが、どれも特性要因図と同じです。 特性要因図は、結果を指す「特性」、結果に影響する要素の「要因」、要因のなかで結果に影響を及ぼすものを「原因」の3要素で構成されています。3つの構成要素を魚の骨のように整理することで、結果と要素の因果関係をわかりやすくしてくれるのです。 特性要因図の考え方は、現場の改善活動を指す「QCサークル活動」の提唱者であり、当時東京大学の教授を勤めていた石川馨(いしかわ かおる)氏によって、1950年頃に発案されました。世界では「フィッシュボーン・チャート(Fishbone chart)」と呼ばれて活用されており、普遍的に活用できる点から高い評価を得ています。特性要因図の目的は改善の段階によって変える
特性要因図は、問題に対処するときだけではなく、現状をより良くする改善活動にも活用できます。次に、特性要因図がどのような目的で活用できるのか、代表的な例を添えてご紹介します。最初の目的は「管理」。問題が起こりそうな要因を洗い出す
最も代表的な目的が、問題が起こりそうな要因を事前に管理できることです。売上や不良率といった「特性(結果)」がどのような「要因」によって構成されており、どの要因に変動があると看過できない影響を及ぼすのか、視覚的に管理できます。 また、事前に管理すべき要因を特定できるため、副次的に「作業マニュアルの策定」にも活用できます。どの作業の重要度が高く、どの数値を正確に計測すべきか、特性要因図をもとに作業マニュアルに盛り込むとよいでしょう。要因の管理ができるようになったら。管理品質向上などの「改善活動」に活用
特性要因図によって要因の管理が行えるようになったら、品質向上やリードタイム短縮といった現場の改善活動にも応用が可能です。どのような要因を改善すれば目標を達成できるのか、注力して改善すべき要因を絞り込めるようになります。 また、チームで活動するとき、特性要因図はチームの「目線合わせ」としての機能も期待できます。改善活動は、現状把握から施策考案と実施、効果検証など、その業務は多岐にわたるため、複数人のチームで行うことが一般的です。自分たちの取り組んでいる施策が、何のために、どの要因や原因に対処しているのかを視覚的に整理できるため、改善活動を行う際は、ぜひ活用してみましょう。「課題解決・改善活動に活用できる特性要因図」や「品質管理に必要な4M」について解説した無料ガイドは、こちらからダウンロードできます。
目的にあわせて特性要因図の種類を使い分ける
特性要因図の目的は、「管理」と「改善活動」に大きく分けられ、その目的に応じて2つの種類を使い分けます。次は、この2種類について解説します。最初に作成し、要因をすべて洗い出す「管理用特性要因図」
これまで特性要因図を作成したことがない場合、「管理用特性要因図」を作成します。些細な心配事でもすべて盛り込み、管理すべき要因を発見することが目的です。 管理用特性要因図を作成するポイントは、想定できる要因を可能な限り洗い出すことです。多くの要因を洗い出すときは、職種や役職にとらわれず、さまざまな人から多角的な意見を集めるとよいでしょう。問題解決や改善活動の分析に用いる「解析用特性要因図」
解析用特性要因図は、管理型を作ったあと、特定の要因や原因を解析して改善するために用いられます。すでに生産ラインが整っている企業では、こちらの解析型を活用することが一般的です。 解析用特性要因図を作成する際は、それぞれの要因が客観的事実に基づいていなければなりません。また、どの要因データを取得するのか重要度による範囲決めも注意すべきポイントです。特性要因図はさまざまな業界で活用されていますが、製造業では、「品質管理の4M」*を記載するとよいでしょう。※「品質管理の4M」とは、品質を管理するために必要な4つの要素をまとめた造語。「Man(人)」「Machine(機械)」「Method(方法)」「Material(材料)」の頭文字を取っています。また、この4要素に「Measurement(検査・測定)」を加えた「5M」や、さらに「Management(マネジメント)」を加えた「6M」という考え方もあります。
関連記事:品質管理の4Mとは?変更管理の方法や5M+1や6Mとの違い
品質管理のフレームワーク「QC7つ道具」
特性要因図は製造業などの品質管理に用いられるフレームワーク・考え方です。特に定量的なデータを扱い分析や改善をサポートする時に効果的なのが「QC7つ道具」と呼ばれており、特性要因図はそのうちの一つです。 数値にしてデータを整理・活用できる場合はQC7つ道具を使って品質の向上を図るといいでしょう。 関連記事:新QC7つ道具とは?従来の7つ道具との違いや各道具を解説 関連記事:パレート図は重要項目の抽出に効果的。図の見方や作り方まで徹底網羅特性要因図の書き方を手順ごとに解説
最後に、実際に特性要因図を作成する手順を紹介します。今回は例として、「不良率増加」を解決すべき特性として定め、特性要因図を作成してみましょう。手順1.取り組む「特性」と背骨を記載する

手順2. 4Mを「要因」として大骨に記載する

手順3.中骨や小骨、孫骨などを記載する

手順4.重要な要因や原因を絞り込む
