酒造業の経営者が知っておきたい事業承継4つのパターンとは?

 2019.09.24  株式会社アウトソーシングテクノロジー

誰でも自身が勤める企業や組織が未来永劫存続して欲しいと願っていることでしょう。特に自身が立ち上げた会社や経営者であれば尚更のことです。しかし、人生は有限です。必ず誰でも自身の身の振り方を考えなくてはならない時がきます。そして、そのタイミングで経営者は、会社をどうするのか、いわゆる「事業承継」という難題に直面するのです。

現在、日本国内の中小企業において「事業承継問題」が多方面で取り上げられています。酒造業の経営者にとっても事業承継は大きな課題であり、企業がそれまで築き上げてきた技術や商品、ブランドを次の世代にどのように承継するかに、今後の経営がかかっていると言ってよいでしょう。

本稿を読まれている皆さんがもしも、事業承継について「まだ考えていない」「そろそろ考えよう」というのであれば、ぜひこのまま読み進めてください。本稿では、酒造業の経営者が考えるべき「事業承継」についてご紹介します。

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事業承継の重要性

日本企業全体のうち、99.7%は中小企業です。日本経済を支えているのは0.3%の大企業・中堅企業だけではありません。中小企業あっての日本経済だと考えられています。大企業・中堅企業の中には中小企業と取引をしている会社も多く、中小企業の中には世界的に高い評価を受けた技術を有している会社もあります。もしも、そうした会社が廃業に追い込まれたとしたら、何が起こるでしょうか?

廃業は中小企業自身の問題ではなく、取引をしている他の企業、それを必要としている大企業、ひいては日本経済にも影響があるのです。実は、残念なことに事業承継の必要性に迫られている中小企業のうち、半数は廃業を決定しているという調査結果があります。これが日本経済にどうインパクトを与えるかは、数字で表現はされていませんが、日本経済にとって大きな損失になることは間違いないでしょう。

特に酒造業においては、近年海外での日本酒ブームによる市場活性化が起きています。また、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開始されることから訪日外国人観光客によるインバウンド需要があります。その際には日本ブランドを全面的に押し出すビジネス戦略が欠かせないとされているのです。

日本の酒造業は海外企業よりも高い技術を有している場合が多く、2020年以降に大幅なブランド化が狙えます。要するに、現実で酒造業の廃業数が増えてしまうと、訪日外国人観光客の需要だけでなく巨大な海外マーケットのニーズを満たせない可能性があるのです。

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事業承継4つのパターン

まずは、事業承継のパターンについて解説します。

事業承継は主に①株式市場への上場、②親族内への承継、③親族外への承継、④M&Aによる承継という4つのパターンがあります。

① 株式市場への上場

上場とは、証券取引所にて自社の株式を売買できるようにすることです。上場することで少なくとも400人以上が会社の株主になります。経営者1人で経営していた状態から一般投資家も含めて広く経営にかかわる状態にすることで、事業承継が可能です。

上場することで銀行借入れの個人保証や担保提供の必要がなくなることはすでにご存知のことと思いますが、大きくは経営者にふさわしい有能な人材を採用しやすくなるため後継候補者の幅が広がりやすくなる点にあります。

ただし、中小企業が株式市場への上場を実現するためには、売上や利益、内部管理体制において証券取引所が求める厳しい基準に対応する必要があるため難易度は非常に高く、また、時間と労力、コストも多分にかかるため、中小企業が上場を目指してもおおよそ1割程度しか上場できない実状があることも事実です。

② 親族内への承継

経営者のご子息やその他の親族に事業を引き継いでもらうパターンです。

親族内への承継は年々比率が下がっていますが、現在においても現実的な選択肢として考える経営者が多いでしょう。経営者の親族内の誰かしらが事業を承継する意思さえあれば、円滑に承継を進めることができます。

一般的に親族内への承継は関係者が納得しやすく、内部反発を発生させることなく承継を実現することが可能であると言われています。さらに、後継者を早期に決定しやすく、後継者教育に十分な時間を注げるのも大きなメリットでしょう。財産の承継においては相続や贈与など、選択肢が広いのが特徴です。

③ 親族外への承継

親族に事業を引き継ぐ意思がなかったり、ご子息が存在しなかったりといった場合に、親族外に事業承継するパターンです。このパターンは年々増加傾向にあります。主な承継先としては社内の経験豊富な従業員や、外部からスカウトした優秀な人材などです。

幅広い視野で後継者を選定することができるため、会社がこれまで培ってきた精神や技術、ノウハウなどを正確に引き継いでくれる後継者を見つけたいという場合は最適な方法です。また、会社の理念が十分に根付いた信頼できる後継者を選定すれば、会社としてのブランドを守っていくことも可能です。

④ M&Aによる承継

M&Aとはいわゆる「合併&買収」のことであり、自社が他の企業に買収されたり、合併したりすることで事業承継を目指すパターンです。昨今では、事業承継の選択肢として選ぶ経営者が多く、事業戦略の一環と考えるケースもあります。

M&Aを実践する場合には、適当な後継者が見つからない場合でも事業承継が可能であり、既存従業員の雇用を持続できるなどのメリットがあります。また、経営者は株式を譲渡することで資金を得ることが可能になります。

 

ほとんどの酒造業では、以上の4つのパターンのどれかを活用して事業承継を行っていくことになるでしょう。自社にとってどのパターンが適切かについては、現状をしっかりと把握した上で選ぶことが大切です。

事業承継で具体的に引き継ぐもの

後継者が決まったとしても「はい、明日からあなたが社長ね」という単純な話にはなりません。事業を承継するということは、具体的には経営権・株式・事業資産の譲渡を実施することを意味します。

具体的にご紹介していきましょう。

1. 経営権

まずは事業継承を行うための、会社の経営権です。これは、経営を行うためにその会社の代表取締役へ就任することだけではなく、他にも会社の経営理念、ノウハウ、顧客情報など会社が保有している知的資産の継承も含まれています。

2. 株式

次に、事業継承する企業の株式です。株式は、企業の最高意思決定機関である株主総会での議決権を有しています。要するに、会社の実質的な経営権を握るためには、その会社の経営陣が自社の発行済み株式の半分以上を保有しておく必要があります。

中小企業経営者は、後継者に経営権を譲渡するために自身が保有している株式を承継するための準備が必要になります。この株式の継承が多くの経営者の悩みの種になっています。事業承継先が現在の適正価格で株式を購入できる場合には問題になりませんが、例えば、ご子息などに贈与する場合には相続財産となるためご子息に多額の資金が必要となるケースが存在します。

3. 事業資産

最後に、事業承継する会社の事業資産です。具体的に言うと事業を行うための設備や機械、不動産などがあります。また、運転資金や借入金などの資産も事業資産として後継者が引き継ぐことになります。

株式や事業資産を譲渡するには贈与税または相続税がかかります。これらの税金が事業承継のボトルネックになるケースが多いのですが、現在では事業承継税制によって解決できるケースが増えています。

事業承継税制とは

事業承継税制は平成30年に大幅改正されました。以前は発行済み株式総数の2/3に対して全額猶予(贈与税の場合)が適用されていたのに対し、現在では贈与税・相続税ともにすべての株式に対して全額猶予が適用されています。要するに、中小企業経営者は事業継承を税額0円で行えるということです。ただし、あくまで“猶予”であり免除ではありません。猶予後に適用要件から外れてしまいますと、既定の贈与税及び相続税に対して利子税が加算された金額を納税する義務が生じますので、多少のリスクもあります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

経営者にとって事業承継は、会社を次代につなぐ重要な仕事です。そして、自身はもとより顧客や従業員、株主、取引先、地域や国のために真剣に考えなくてはならない最後の仕事です。

上記でご説明したように事業承継は、すぐにできるものではなく計画的に進める必要があります。この機会に自社の事業承継について改めて考え、事業承継に向けた計画を立ててみてはいかがでしょうか。また、会社の重要なデータを後継者にわかりやすく承継するためにも弊社の三酒の神器を導入いただければ嬉しい限りです。

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