酒造業のM&Aによる成功事例

 2019.10.29  株式会社アウトソーシングテクノロジー

中小企業が抱えている「事業承継問題」。経営者の高齢化により5年以内に引退する可能性のある経営者は実に3分の1以上存在すると言われており、そのうち半数が事業の「廃業」を検討しているそうです。

そして、残念なことに酒造業においても事業承継に関する問題がいたるところで起きています。「酒造業の経営者が知っておきたい事業承継4つのパターンとは?」でご紹介した通り、最近では親族内承継の件数も減少傾向にあり、事業承継の難しさが一層際立っている時代です。

本稿ではこのような状況の中で事業承継の一つのオプションであるM&Aによる買収・売却事例をご紹介します。

casestudy-of-business-succession

酒造業のM&Aによる買収・売却事例

  1. 株式会社綾菊酒造 〜同業他社とのM&A で後継者問題を解消〜
  2. 株式会社老田酒造店 〜280年の歴史と事業を未来に繫ぐ事業譲渡〜
  3. 有限会社川勇商店 〜ベンチャー企業との相乗効果で日本酒マーケットを拡大〜
  4. 阿桜酒造株式会社 〜M&Aによるグループ化で経営の合理化を促進〜
  5. かづの銘酒株式会社 〜自治体や商工会議所のサービスを活用して後継者問題を解消〜
  6. 銀盤酒造株式会社 〜新たな商品開発や販路拡大を目指しM&Aを実施〜
  7. 瀬戸酒造店 〜都市・地域計画、観光を主体とする企業によるM&A〜
  8. 千代菊株式会社 〜事業効率化や収益性工場のためにM&Aを実施〜
  9. 富士高砂酒造株式会社 〜シナジーの創出、費用削減のためにM&Aを実施〜
  10. 米澤酒造株式会社 〜M&Aにより廃業の危機から脱し、事業を継続〜

1. 株式会社綾菊酒造

香川県に所在する株式会社綾菊酒造(以下綾菊酒造)は、酒類食品総合卸業を展開する株式会社飯田に全株式を譲渡しています。1790年に創業を開始した綾菊酒造は「国重」や「綾菊」などで知られる酒造会社であり、綾菊酒造の経営者は高齢化している一方、後継者不在の課題を抱え事業承継が進まず差し迫った状況にありました。そこで、日本酒などを含む酒類関連事業を展開していた株式会社飯田とのM&Aを実施し、後継者問題を解消し経営を再建させることに成功しています。

https://www.ayakiku.com

 

株式会社老田酒造店

「鬼ころし」ブランドで有名な株式会社老田酒造店(以下老田酒造店)は、食品関連企業グループである株式会社ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)に事業譲渡を行いました。JFLAは、同社を子会社化するとともに同酒造店の社名を変えず、鬼ころしなど各種地酒の製造と従業員約20人をそのまま引き継ぐ形で新たな経営を実現しています。1720年代に創業を開始し約280年の歴史を誇る造り酒屋の歴史がM&Aによって引き継がれる事例となりました。

http://www.onikorosi.com

 

有限会社川勇商店

日本酒専門のWebメディア「SAKETIMES(サケタイムス)」を運営している株式会社Clear(以下Clear)は、有限会社川勇商店(以下川勇商店)の全株式を取得することで、完全子会社化を実現しています。日本酒事業に特化したベンチャー企業であるClearは、日本酒マーケットへの深い知見とユーザーコミュニティを活用して小売業への参入を模索しており、その戦略のもとM&Aを成功に導いた事例です。

https://clear-inc.net

 

阿桜酒造株式会社

株式会社SAKEアソシエイツ(以下SAKEアソシエイツ)は、秋田県横手市にある阿桜酒造株式会社(以下阿桜酒造)をM&Aにより買収し、グループ化しています。SAKEアソシエイツはこの他にも複数の酒蔵や酒造会社をグループ化しており、米の仕入れなどグループ内での経費削減や合理化を推し進めることで経営力の強化を図っています。

http://www.azakura.co.jp

 

かづの銘酒株式会社

居酒屋「半兵ヱ」などを全国展開している外食チェーンの株式会社ドリームリンク(以下ドリームリンク)は、「千歳盛」で知られるかづの銘酒株式会社(以下かづの銘酒)を株式取得によって完全子会社化しています。かづの銘酒は事業承継問題に悩まされており、ドリームリンクが経営を引き継ぎ自社事業でのシナジー効果を期待し、M&Aを実施しています。この両社のM&Aの発端は、後継者不在に悩んでいたかづの銘酒の田村社長が、秋田商工会議所の「秋田県事業引継ぎ支援センター」に相談しところから始まっています。同センターの登録民間支援機関の秋田銀行がドリームリンクを紹介しM&Aに至りました。

https://chitosezakari.jp

 

銀盤酒造株式会社

株式会社ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)の子会社である盛田株式会社は、富山県の日本酒酒造メーカー銀盤酒造株式会社を株式取得によって子会社化しました。このM&Aの取得価格は5億円になっています。盛田株式会社は双方の製造機能を活用し、新しい商品開発や販路拡大、営業圏拡大、海外展開などが見込めるグループを作ることを目的にM&Aを実施しています。

http://ginban.co.jp

 

瀬戸酒造店

都市・地域計画や社会政策、観光、道路などさまざまな事業展開をする株式会社オリエンタルコンサルタンツ(以下オリエンタルコンサルタンツ)は、神奈川県開成町の酒蔵である瀬戸酒造店を子会社化しています。オリエンタルコンサルタンツは地域活性化のために、酒蔵で働く杜氏などの確保が困難になったことで事業運営を断念していた瀬戸酒造店の子会社化に踏み切っています。

https://setosyuzo.ashigarigo.com

 

千代菊株式会社

株式会社ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)の子会社である盛田株式会社は、岐阜県の千代菊株式会社を株式取得によって子会社化しています。盛田株式会社では、当M&Aによって事業効率化や収益性向上を目指しています。

http://chiyogiku.co.jp

 

富士高砂酒造株式会社

静岡県にある清酒製造業者及び酒蔵の富士高砂株式会社は、株式会社SAKEアソシエイツの子会社となっています。阿桜酒造株式会社と同様に、M&Aによってグループ企業のシナジー創出や費用削減が目的です。

http://www.fuji-takasago.com

 

米澤酒造株式会社

長野県に本社を置く伊那食品工業株式会社は、地元の酒米を使った「今錦」で有名な米澤酒造株式会社(以下米澤酒造)を子会社化しています。米澤酒造は経営難や後継者不在などの問題に直面しており、廃業に危機に立たされていました。当M&Aが実施されたことによって廃業を免れ、日本酒酒造の継続が実現しています。

http://www.imanisiki.co.jp

 

酒造業のための経営指針ガイド
三酒の神器 パンフレット

M&Aの売却・買収による費用の考え方

M&Aによって酒造会社を売却・買収する際に必要になる費用はいくらなのか?事業承継問題の解決策としてM&Aを選択することは賢明な判断ですが、会社の売却に関しては専門家に頼むことが一般的です。

M&Aにかける費用は可能な限り抑えたいのが多くの経営者の心情でしょう。一般的に、M&Aによる売却・買収にかかる費用は「仲介手数料」と「税金」です。仲介手数料は、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなど「M&Aの専門家」を活用した際に、支払う手数料のことです。

M&A仲介会社及びアドバイザリーによって仲介手数料の金額は変化しますので、事前に確認するようにしましょう。また、もう1つの費用である税金は、M&Aを実施して会社を売却したり、事業を譲渡した際には売買価格に応じた税金を支払う義務が発生します。税金の種類や税額は、実施されるM&A手法(株式譲渡、事業譲渡)などや売買価格によって異なります。

M&Aによる会社売却時に考えておきたいこと

M&Aは、事業の存続を望む酒造業にとって大きな手助けとなることに間違いありません。しかし、自身の会社の方向性や要望に関しては、後からボタンの掛け違いが無いように的確に売却先に伝えておくことが重要です。

一般的にM&Aによって会社を売却すると、従業員の雇用確保や後継者問題の解決、売却益・譲渡益の獲得、経営の安定化、ブランドの維持、個人補償・債務・担保などの解消につながります。しかし、本当に自社の従業員の雇用は確保されるのか、ブランドは継続されるのかなどは、新しい経営陣に委ねられることになります。事前のこれらの要望に関しては伝えておくようにすることが重要になります。

今回ご紹介したM&Aは、後継者問題などを抱える酒造事業者にとって、問題を解決するためのオプションの一つです。M&Aによる事業承継を検討する企業は、M&Aを成功させるためのポイント等をしっかりと把握した上で、売却先を検討してみてはいかがでしょうか。

酒造業のための経営指針ガイド

RECENT POST「酒造業と経営」の最新記事


酒造業のM&Aによる成功事例