酒造業者が知っておきたい今後の消費税と軽減税率について

 2019.07.16  株式会社アウトソーシングテクノロジー

※本記事は2019年7月時点の情報をもとに執筆されています。内容は変更される可能性もありますのでご了承ください。

2019年10月に消費税率が8%から10%へ引き上げられるのに伴い、“軽減税率制度”が施行されることはご存知の方も多いでしょう。複数税率とも呼ばれるこの制度は、生活の上で欠かせない食料品などの消費税率を8%のままで据え置きし、消費者への経済的配慮として施行されます。

酒造業の経営者やご担当者の方々は周知の事実として、酒税法に規定する酒類は食品から除かれる軽減材率対象にならないということはすでにご存知かと思います。そのため、「うちはあまり関係ない」とお思いの方も多いことでしょう。しかし実際は、軽減税率は細かいルールが規定されており、酒造業に従事する者にとって着目すべき点がいくつかあります。

本稿では、酒造業の経営者に向けて これからの消費税率と軽減税率について解説いたします。適切な対応を取るためにも、ぜひ参考にしてください。

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今、酒造業界では何が起きているのか

最初に酒造業の経営に携わる方々にご理解いただきたいことをご紹介します。

消費税増税および軽減税率の適用は、2019年10月です。すでに現時点において対応への時間が刻々と迫っており、すぐに経営基盤への対策が必要な状態です。そして、多くの酒造業者の方々は2020年1月14日のWindows 7サポート終了への対応とともに、既存システムの刷新や新税制への対応に邁進しています。そのため多くの中小システムインテグレーターでは、既存案件への対応で忙しく新規受注を制限している状態になっています。

また、消費税増税前には毎回「駆け込み需要」が起こります。このことは経営者の方であれば過去の経験から認識していることでしょう。駆け込み需要は、先食い需要とも言われ、値上げや増税、販売終了といった消費者にとって好ましくない事態の発生を理由に、その事態直前に商品の需要が増加する現象のことです。

この駆け込み需要ですが、電通が10%への消費増税に向けて実施した「全国1万人意識調査」の結果によると、消費増税までの間に「事前に購入する/買い置きする」などの対策を、検討していると答えた人は、70%近くとなり、駆け込み需要があることわかっています。

しかし、酒造業者にとっては、売上が一時的に伸びるため嬉しい反面、その反動も予測されています。総務省統計局のデータを確認すると2014年4月に消費税8%になったことによる「消費税率引上げによる駆け込み需要の反動が見られた主な品目等」が公開されています。そこには酒類(焼酎、ビール、発泡酒など)が消費税増税月における対前年同月比において20%前後落ち込んだことが記載されています。

このような背景から酒造業の経営者は、消費税率の引き上げに向けてしっかりとした準備とともに強い経営基盤の構築が必要不可欠な状態と言えるのです。

酒類は軽減税率の対象?
販売価格、売上に関わる知っておきたい情報

それでは具体的にどのようなことが起きるのかを整理して行きたいと思います。

酒造業が販売する商品は、そもそも軽減税率の対象になるのかが最も気になる事でしょう。軽減税率は、消費者に対して経済的配慮を行うための制度であり、生活に欠かせない飲食料品を中心に増税を延期するものです。お酒は飲食料品だから軽減税率が適用されるのかと思うかもしれませんが、飲食料品においても適用可否の基準が存在します。軽減税率が適用されるか否かのボーダーラインは「ぜいたく品か、そうでないか」です。酒類は飲料ですが、ぜいたく品として考えられており、残念ながら酒税法に規定されている酒類はすべて軽減税率対象外となり、消費税率は10%へ引き上げられます。

ちなみに、国民が情報を知る権利は所得に関係なく等しいものであるため、定期購買している新聞料金などについても軽減税率が適用されます。

酒造業のための経営指針ガイド
三酒の神器 パンフレット

原価・仕入価格に関わる知っておきたい情報

では、清酒等の原料になるお米(酒米)は軽減税率対象になるのでしょうか?答えは「YES」です。これは『消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事情編)』において、国税庁が以下のとおり回答しています。

Q. 日本酒を製造するための米の販売は、軽減税率の対象となりますか。

A.「食品」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいい、酒税法に規定する酒類は、ここでいう「食品」から除かれています。他方、日本酒を製造するための原材料の米は、酒類ではないので、「食品」から除かれず、人の飲用又は食用に供されるものであることから、その販売は軽減税率の適用対象となります(改正法附則 34①一、軽減通達2)。

このように、清酒等の製造に使用されるお米は食料品に分類されるため、酒造に使われる場合であっても軽減税率が適用され、消費税率が8%に据え置かれます。また、酒造業者が食品用としてお米を販売する場合でも、軽減税率が適用されます。

テイクアウトは軽減税率適用、酒類の場合はどうなる?

軽減税率制度では、飲食料品であっても“外食”の場合は適用外になるとされています。外食とは、「飲食に用いられる設備(テーブル、椅子など)が設置されている場所において、飲料食品を飲食させる役務で提供する飲食店での食事」を指します。

つまり、「テイクアウト(持ち帰り)ならば軽減税率が適用される」ということです。飲食店で購入した飲食料品でも、軽減税率が適用されて消費税率は8%のままとなります。

では、飲食店で酒類をテイクアウトした場合はどうなのか?このケースでは、そもそも酒類が軽減税率対象の飲食料品に含まれないため、たとえテイクアウトであっても残念ながら消費税率は10%へ引き上げられることになります。

この他、酒造業の経営者が知っておきたい軽減税率の知識

上記の他にも、酒造業者が軽減税率を理解するためのポイントがいくつかありますので、ご紹介します。

ノンアルコールビールは軽減税率対象

酒税法に規定する酒類とは「アルコール分1度以上の飲料」を指します。従って、ノンアルコールビールなど度数が1度未満ならば軽減税率が適用され消費税率8%になります。

みりん、料理酒などは軽減税率対象外

日本料理で使用するみりんや料理酒に関しては、一般的に流通している商品のほとんどが酒税法上の酒類に該当しています。従って、消費税率は10%が課せられることになります。同様に、料理に使用する清酒やワインに関しても消費税率は10%となります。ただし、アルコール分1%未満で酒税法上の酒類に分類されないみりん風調味料は軽減税率が適用されます。

消費税引き上げと軽減税率への対応チェック

以上のように、酒造業者にとっても消費税引き上げと軽減税率は重要な制度です。最後に、適切に対応するためのチェックポイントをご紹介します。ぜひ、参考にしてみましょう。

軽減税率制度の内容を確認する

  • 軽減税率制度の実施時期、軽減税率の対象品目、仕入税額控除のための帳簿及び請求書等の記載事項、納税事務(税額の計算)
  • 事業者の準備を支援する仕組み:「軽減税率対策補助金」

対応が必要な事項の把握と準備を開始する

  • 影響が生じる事務の確認及び業務手順の見直し
  • 現行の帳簿及び請求書等の記載の仕方から区分記載請求書等保存方式への対応
  • 会計システム等の導入・改修・入替え
  • 軽減税率制度に対応したレジの導入・改修及び受発注システムの改修・入替え(「軽減税率対策補助金」の活用の検討)
  • 軽減税率対策補助金の交付申請手続き(一部ベンダーなどによる「代理申請制度」の利用が可能です。)

売上・仕入商品の税率区分を整理する

  • 売上・仕入商品に係る税率区分(軽減税率の対象取引の有無)の確認

業務手順の見直しやPOSレジ・システムの操作確認をする

  • 日々の商品管理や販売管理方法の見直し(商品マスタの見直し)
  • 税率区分に応じた経理処理の見直し(経理処理マニュアルの整備)
  • 納品書や請求書などの帳票の見直し(取引先との連絡・調整)
  • 買換え又は改修したレジ・受発注システムの操作確認

制度の実施に向けた本格的な準備をする

  • 商品ごとの税率区分等をシステムに登録(商品マスタの整備)
  • 値札の付け替え、価格表示の変更準備
  • 従業員への研修(説明会等への参加)、店頭などでの消費者向けの周知(店頭ポスターなど)

政府の制度などを活用し適切な対応を心がける

消費税増税は酒造業の経営に大きなインパクトをもたらすことは確実です。経営者としては、このインパクトを乗り越える準備が必要不可欠となるでしょう。先日、公的補助金(軽減税率対策補助金)のご紹介をさせていただきましたが(参考記事:酒造業が資金調達を成功に導くポイントとその方法を解説(公的補助金の活用 他))、酒造業の経営者は、これらの政府からの資金援助などをうまく活用しながら、この状況を乗り越え、未来に備えることが重要になります。

ご不明点などがございましたら弊社アウトソーシングテクノロジーにご相談いただければ幸いです。

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