酒造業の特徴と他業種との違い

 2019.04.01  株式会社アウトソーシングテクノロジー

日本では古くから酒造業が盛んであり、清酒にいたっては西暦716年(霊亀2年)頃の「播摩国風土記(はりまのくにふうどき)」に、日本で初めて清酒の原型になる「清酒(きよさけ)」が作られたことが記されています。その後、日本人の緻密かつ繊細な性格と職人気質から清酒はさまざまな酒造方法が編み出され、現在にいたります。

時代ごとの節目には海外諸国からワインやビール、ウイスキーやブランデーといった種類の酒も取り入れながら、ジャパニーズウイスキーにいたっては世界の5大ウイスキーに数えられるほど高い評価を得るまでになりました。 

そんな酒造業は、他の製造業や他業種と違っていろいろな特徴があります。本稿では、その特徴について整理していきたいと思います。

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酒造業の特徴① 国内市場が縮小傾向にある

酒造業市場における細かいデータは、国税庁課税部酒税課が発行している「酒のしおり」で確認することができます。まず、酒類販売(消費)数量の推移から見てみますと、1996年(996万KL)をピークに年々減少傾向にあり、2016年には1996年の87.1%の水準(841万KL)まで下がっています。

次に成人1人あたりの酒類消費数量の推移を見てみますと、同じく1996年には99.5Lだったのに対し、2016年には80.9Lと、約19Lも低い数値となっています。 

このデータから見えてくる酒造業市場縮小の大きな原因は、近年叫ばれている人口減少に加えて、若者の酒離れだと言えます。厚生労働省による「平成28年国民生活基礎調査」によれば、飲酒習慣のある20代の男性は14.5%、女性は6.5%、30代で飲酒習慣のある男性は33.2%、女性は14.7%といずれも平均数値から低い結果になっています。ちなみに最も飲酒習慣の多い60代では男性が54.0%、女性が22.5%となっています。

各種酒類の販売(消費)数量の推移を見てみますと、1989年から唯一増加傾向にあるのがリキュール類です。日本伝統の清酒や焼酎、その他ビールやウイスキーなども減少傾向もしくは横ばいにあります(2016年まで)。このことから、日本人の飲酒習慣ではビールからチューハイや、ビールに類似した低価格酒類(いわゆる新ジャンル飲料)に消費が移行していると考えられます。 

酒造業の特徴②地産地消のビジネスモデル

2つ目の特徴として挙げられるのは酒造業が地域密着型であるということです。地域で生産した米を原料として、それを地域で消費する地産地消のビジネスモデルをベースに長年経営が続けられてきました。地域をターゲットにしているため商圏が小規模であり、全国展開を行う酒造もありますが、大多数の酒蔵は中小企業であり、その半数以上は年間純利益が50万円未満の低収益企業となっています。

さらに酒造業には強い季節性があり、清酒の場合は一般的に冬季に製造を行います。これは冬季の気候が清酒の製造に適していることと、農閑期に農業者が酒蔵で働くことで、蔵人(くろうど:酒蔵で働く人)を集めやすいという背景があります。大手酒蔵ともなると、設備と資本があることから「四季醸造」といって、年間を通じて酒造を行う体制が整えられています。

酒造業の特徴③酒造工程

酒造業の製造工程とはやはり一般的な製造業とは違い、特別な酒造工程があります。日本から伝統的に続く清酒造りでは次のような工程で進められます。 

  1. 玄米の精米
  2. 白米の洗米、浸漬、蒸きょう
  3. 蒸米から製麹
  4. 蒸米、こうじ、酵母、水の発酵
  5. 上槽
  6. 清酒からろ過、あるいは貯蔵
  7. 割水、再びろ過
  8. 火入れ瓶詰

以上が大まかな酒造工程です。これらの工程は杜氏(とうじ)と呼ばれる清酒造りの最高責任者の指揮のもと、進められていきます。杜氏は長年の経験から酒造工程におけるベストな方法とタイミングを熟知しており、大方の酒造工程は目視確認などによって進められていきます。 

このことから、酒造業は他の製造業に比べて平準化が行われていないとうのも大きな特徴です。特定名称酒のような高級清酒を製造しようとすると、非常に緻密かつ繊細な作業が必要になるため、平準化が難しいという理由もあります。ただし、昨今のIoTやAIといったテクノロジーの進化により、これらの問題を解消するという動きも活発化してきています。

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 酒造業の特徴④酒税がかかる

酒造業ではたばこ税などと同様に、酒類独自に存在する税金「酒税」があります。この酒税は品目ごとに税率が違います。

酒類の分類 税率
区分(アルコール分等) 税額
(1キロリットル当たり)
発泡性酒類 (基本税率) 220,000円
ビール 220,000円
麦芽比率50%以上又はアルコール分10度以上 220,000円
麦芽比率25%以上(アルコール分10度未満) 178,125円
その他の発泡性酒類 (ビールおよび発泡酒以外の品目の酒類のうち、アルコール分10度未満で発泡性を有するもの) 80,000円
醸造酒類 (基本税率) 140,000円

清酒

120,000円
果実酒 80,000円
その他醸造酒 140,000円
蒸留酒類 (基本税率)
21度以上
200,000円に20度を超える1度ごとに10,000円加算
(基本税率)
21度未満
200,000円に20度を超える1度ごとに10,000円を加えた金額
連続式蒸留焼酎 200,000円に20度を超える1度ごとに10,000円加算
単式蒸留焼酎 200,000円
ウイスキー、ブランデー、スピリッツ (37度以上) 370,000円に37度を超える1度ごとに10,000円加算
ウイスキー、ブランデー、スピリッツ (37度未満) 370,000円

出典:国税庁の酒税率一覧表(平成 18 年5月1日~)より

※酒税は執筆時点の情報であり実際には国税庁のホームページなどで最新情報をご確認ください。

酒造業の特徴⑤帳票類の違い

酒造業では酒税などがあることから、用意すべき帳票も他の業種と大きく違います。 

  • 酒造業特有の書類
  • e-TAX
    • 酒税納税申告書
    • 税額算出表
    • 戻入れ酒類控除(還付)税額算出表
    • 移入酒類の再移出等控除(還付)税額計算書
    • 被災酒類に対する酒税の控除(還付)明細書
    • 酒類の移出数量明細書
    • 酒類の製成及び移出の数量等申告書
    • 販売数量等報告書
    • 酒類移出帳、酒類戻入帳
  • 酒類移出簿
  • 輸出免税証明申請書
  • 輸出免税明細書
  • 未納税移出通知書
  • その他 

酒造業の経営効率化が難しい理由 

日本国内の多くの企業がITを活用して事業の効率化や成長を実現しています。しかし、酒造業は上記で紹介したような特徴から、IT化が遅れている業種の一つであり、真に成長に寄与する酒造業に特化したITソリューションも少ない現実があります。

繰り返しになりますが、酒造業は他の製造業などの業種と違い、多くの特徴を持っています。製造工程は複雑であり、業務プロセスも、管理すべき帳票類に関しても違います。 

そのため、攻めに転じる施策と同時に業務効率化を実現するシステムが必要不可欠になります。

当社アウトソーシングテクノロジーでは、長年酒造会社様のシステム構築を支援してきた経験から、多くの酒造会社でシステム導入をもっと安価に、汎用的に行えるための「三酒の神器(さんしゅのじんぎ)」を開発/提供しております。

酒造業における製造工程管理や業務プロセスの簡略化、海外展開なども検討している酒造会社様は、ぜひ三酒の神器で大きな生産性を手に入れてください。

出典:平成30年3月 酒のしおり平成28年国民生活基礎調査 

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