酒造業者のための今後義務化されるHACCPについて

 2019.09.17  株式会社アウトソーシングテクノロジー

日本の特定名称酒が海外で高い評価を得ている中、海外展開を計画している酒造業者も増えていることでしょう。そして、自社商品を海外に輸出する際に必ず必要になるのが“HACCP(ハサップ)認証”です。実はこのHACCPへの対応を実施するのは海外展開の企業だけではなくなりつつあります。

2018年6月に施行された食品衛生法の大改正に伴い、世界の先進国が取り入れているHACCPが日本でも制度化され、2020年6月からは義務化されます。つまり酒造業者はこのHACCPへの対応を実施する必要があるのです。

本稿では、酒造業者が知っておきたいHACCPの基本についてご紹介します。

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HACCP(ハサップ)とは?

HACCPは1960年代、米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品(飲料を含む表現)の衛生管理の方式です。Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字を取り、日本語では“危害分析重要管理点”と訳されています。

この制度は、食品の製造・出荷の工程において、どの段階で微生物や異物混入が起きやすいかという危害を事前に予測・分析し、被害を未然に防ぐという管理手法を体系化したものです。

食品のグローバル化を背景として、原材料や製品などが国際的規模で流通しているのはご存じでしょう。このような中で、環境汚染や微生物による汚染等の中では、従来行ってきた最終食品を検査する方式(抜き取り検査)では危害を十分に防止することが困難になっています。食品の安全性を確保するためには、その工程・加工・流通・消費というすべての段階で衛生的に取り扱うことが必要であり、食品製造工程中に危害防止につながる重要管理点をタイムリーに監視・記録していくHACCPシステムの考え方が必要になっているのです。このHACCPは、国連のFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機構)の合同期間であるCodex(食品規格)委員会から発表されており、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。

 

HACCPシステムとは?

HACCPシステムは、原材料の受け入れから最終製品までの各工程において、微生物による汚染や金属の混入などの危害を予測した上で、危害防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録するための工程管理の手法を指します。

HACCPシステムによる衛生管理手法は、勘や経験に頼る部分が多かった従来の衛生管理の方法とは異なり、あらゆる角度から食品の安全性について危害等を予測した上で、それぞれの製造工程ごとに危害原因物質とその発生要因、危害の頻度や発生したときの影響力の大きさなどを考慮してリスト化し、それぞれの危害を適切に防止できるところに管理点を設定して重点的に管理・記録しようとするものになります。

HACCPシステムを採用することにより、工程全体を通じて問題が発生しそうな段階から適切な対策を講ずることで、食中毒(微生物及び化学物質を含む)や、異物などによる危害を未然に防止して、食品の安全性を図ります。

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HACCPの12の手順

HACCPを導入する際には、次の12の手順を踏まなければいけません。特に、手順6から手順12までは重要であり「HACCPの7つの原則」と呼ばれています。

 

手順1: HACCPのチームを編成する。

手順2: 製品の名称や種類、原材料、添加物などを記述する。

手順3: 製品を加熱して食べるのか、そのまま食べるのかといった用途や、主に誰が食べるのかという消費者を確認する。

手順4: 原材料の仕入れから最終製品の出荷まで製造工程の一覧図を作成する。

手順5: 製造工程一覧図が現場の認識とズレがないか確認する。

手順6: 各工程で危害要因になりそうなものを洗い出して分析し、対処方法を検討する。(原則1)

手順7: 加熱殺菌や金属探知など危害要因を取り除くための重要管理点(CCP)を決定する。(原則2)

手順8: CCPが適切に制御されているかどうかを判定するための管理基準(CL)を設定する。(原則3)

手順9: CCPが適切に管理されているかどうかを確認するためのモニタリング方法を設定する。(原則4)

手順10: モニタリングした結果、CLから外れているときに行う改善措置を設定する。(原則5)

手順11: HACCPが適切に機能しているかを確認するための検証方法を設定する。(原則6)

手順12: HACCPを実施したことを記録に残し、保存するための方法を設定する。そのことでどの工程で問題が生じたのか、ひと目でわかるようにする。(原則7)

 

HACCPのメリットとは?

上記のように、HACCPを導入するにはたくさんの手順が必要であり、かつ明確に体系化された衛生管理手法だということが分かります。そのため、HACCPを導入することで企業は次のようなメリットを得ることになります。

  1. 従業員の衛生管理に対する意識が向上する
  2. 食品に問題が発生した際に、原因追求と改善対応が迅速に行えるようになる
  3. 食品に関する事故やクレームが減少する
  4. 企業の社会的イメージが良くなり、顧客の信頼度が上がる

HACCPに対応するためのコストや労力は確かにかかりますが、それ以上のメリットを得られるのが大きな特徴です。

 

HACCP認証について

HACCP認証とは、自社の衛生管理システムとしてHACCPが機能しているかどうかを第三者機関が評価し、認証する制度です。認証を受けた企業にはHACCPマークが与えられます。認証機関は1つではなく、日本国内に複数の機関があり表示しているマークデザインも異なります。

HACCP認証の種類

HACCP認証には各種団体の認証と審査機関があります。一般的に、経営の規模、流通の範囲、食品の種類などによってどのHACCP認証が良いかを選定します。

認証の種類

特徴

認証・認証団体

地方自治体によるHACCP認証(地域HACCP)

地域HACCPと呼ばれ、各自治体が独自で定めた基準で審査を行う。中小企業でも取得しやすいのが特長。対象製品や適用範囲が限られている。

・東京都食品自主管理認証

・北海道HACCP自主衛生管理認証

・みやぎ食品衛生自主管理登録

・福井県食品衛生自主管理プログラム 等

業界団体認証

適用範囲がその業界・業種に限られている。

・全国菓子工業組合連合会

・(社)日本惣菜協会

・(社)日本炊飯協会

・(社)日本食肉加工協会

・(社)日本給食サービス協会

・全国製麺協同組合連合会 等

総合衛生管理製造過程

(マル総)

厚生労働省の認証制度。

対象製品が容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰、レトルト食品など)、魚肉練り製品(かまぼこ、はんぺんなど)、乳・乳製品、清涼飲料水、食肉製品に限られている

厚生労働省

民間審査機関による認証

民間のHACCP認証は数多くある。また民間HACCPの特徴として

・フードチェーン全体を適用範囲としているものが多い

・事例や手引書がない業種、製品も多い ・社内の人材教育や外部コンサルティングなど費用が大きくなる場合もある

・審査レベルが審査員の力量に左右される場合がある

・ISO220000

・SGSHACCP

・SQF2000/HACCP

・ISO9001/2008

・FSSC22000

・IQFSI認証

 

以上がHACCPの基本となります。

 

HACCPは、対応が義務化されますので酒造業者ではぜひHACCPに関する理解を深めていただきたいと思います。

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