酒造業におけるこれからの人事と人材の育成について

 2019.11.28  株式会社アウトソーシングテクノロジー

酒造業において長年叫ばれているのが「人事のあり方」と「人材の育成」についてです。高齢化が進む杜氏や縮小する酒造市場を前に、人事と人材という2つの観点から改革を進めなければ、将来を勝ち抜く企業体質は成しえません。本稿では、酒造業におけるこれからの人事と、人材の教育についてお話します。

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現代の酒造業に求められる人材とは?

酒造業において求められる人材の要件には、職務によって相違はありますが、共通して求められる資質とは「マーケティング志向」と「計数意識」だとされています。

マーケティング志向とはつまり、どのような戦略を実行すればお客様に商品を買っていただけるか?競合他社に勝てるか?の視点で事業を捉えることです。従来、日本の酒造業では「良いものを造れば売れる」や「製造だけにこだわる」などの認識にこだわり、マーケティングに意識を向けてこなかった経緯があります。

しかし時代は変化し、消費者の趣向やライフスタイル、酒の買われ方や購入場所、比較検討される競合も大きく変化してきています。こうした消費者の変化を捉えて対応することを疎かにした企業は、酒造市場で勝ち残っていくことは難しい実情があります。

このマーケティング志向は、酒を造る部門と売る部門、それぞれの立場で正確に認識したうえで、戦略を的確に実施することができれば、企業が衰退するリスクが大幅に減少し、反対に成長のための要素が増えることでしょう。

さらに、酒造業に求められる人材の資質を細かく表すと、以下のようなものが必要になります。

  1. 消費者のニーズ(必要性)を把握する力
    消費者が何を望んでいるのかを商品に関するあらゆる面で把握する。

  2. 消費者ニーズにあわせた商品を企画する力
    商品企画および製造においては、自社ブランドを生かしながらニーズに対応する。

  3. 消費者ニーズに対応する活動をできる力
    情報提供、販売、アフターサービスなど顧客満足を得る活動を実施する。

  4. 計数意識を常に持ち、適切な利益を得るための判断をできる力
    無駄の削減、販売数量より売上高、売上高より利益高という意識で経営に携わる。

引用:国税庁『清酒製造業の健全な発展に向けた調査研究 第3節 人材の育成』

IT人材の育成も急務

現代社会においてビジネスとITは切っても切り離せないものとなっています。例えば上記で示したように「計数意識」においては、実際にその数値を出すためにITの力が必要不可欠です。また、昨今では生産工程においてもIoTやAIといった高度な技術が使われ始めていたりします。このような状況の中で、やはりITを理解してそれを武器に変えられるような人材が不可欠と言えるでしょう。

酒造業のための経営指針ガイド
三酒の神器 パンフレット

人材育成の手法

酒造業では従来から「習うより、慣れろ」という精神で仕事をしながら現場教育を実施するというスタイルが中心でした。いわゆる現代でも実施されている「OJT(On-The-Job Training)」という人材教育手法の1つです。ただし、酒造業では他業種と比べて特殊な業務や商習慣が多いことから、この現場での習得は非常に重要であることに代わりはありません。さらには、従来の慣習にとらわれるのではなく、新しい発想で柔軟に対応していく必要性が求められています。

現代社会の製造業においてはその技術進歩が速く、現在ではさまざまなノウハウが生まれています。酒造業においても新しい人材教育手法について積極的に情報を収集し、新しい枠組みに対応できる能力を育成していく必要があります。

そして、昨今の酒造業において進んでいる人材育成手法が「社員杜氏化」です。多くの酒造業は当時の高齢化という深刻な問題を抱えており、早急に技術承継のための計画を確立しないと、従来の品質を保てない可能性が出てきます。そこで、社員全員が当時のように酒造りに携われる環境を構築することが、現代の酒造業に必要だと考えられています。

社員杜氏化を推進するI社の事例

I社では数年前から酒造りを社員のみで行っています。I社が本格的に社員杜氏化を目指したきっかけは、やはり当時の高齢化問題が原因であり、日本の酒造りの技術伝承に危機感を持ったこともきっかけの1つです。

方針転換にあたって、まず杜氏にその必要性を納得してもらうことに配慮したようです。社員杜氏化の育成には時間がかかり、一通り酒造りを経験させるだけでも6~7年は必要なので、現場では単なる作業指示から指導・教育へと浸透を図ることで、技術伝承の実効性を高めました。

さらに、社員の自主性を一貫して尊重しています。I社の酒造りは伝統的製法を多くの残しているため、熱意なくしては成り立たないものです。経営者の関与は設備の保全や工夫、宿舎の充実といった働きやすい環境づくりが中心となり、酒造りについての権限は大幅に委譲しました。その結果、社員たちの意欲は旺盛となり、「来年は生酛造り、山廃仕込みをやってみたい」など取り組み意欲が向上し、技術承継の成功に向かっています。

人材育成のポイントは「環境づくり」にあり

人材を成長させるためには良い環境が必要であり、どんなに高い知識・能力を持った人材でもそれを発揮する場を与えられなければ、高い成果を上げられません。知識等を実践する受け皿がなければ、日々の作業に流されるだけになってしまいます。

社内情報の伝達がスムーズであったり、互いにコミュニケーションを深める場が設けられていたり、成果をきちんと評価できる仕組みがあってこそ、人材は成長していきます。また、社員全員が事業に参加しているという意識を持つ工夫を用意していくことが肝要です。

A社の環境づくり

A社では蔵人たちが互いに気持ちよく挨拶し、食事時間にはみんなで明るく過ごす習慣があります。酒蔵で働くことが好きな人ばかりが集まっているのです。そのような環境は、瞬く間に噂となり、A社での就職を希望する人があとを立たないそうです。酒造りに対する情熱や明るい職場づくりが良い影響を及ぼしていると言えるのです。

また、同社では、明るい職場環境づくりだけではなく、酒造りの研修にも積極的に参加させ、人材育成にも取り組んでいます。酒は人が造るから面白く、人の思いが形になるから個性を打ち出すことができると考えており、製造設備に投資して大量生産を狙うのではなく、より質の高い酒造りを続けるために、次の設備投資では従業員宿舎をきれいな個室タイプのものに変え、社員の精神にゆとりを持たせようと考えているようです。

社員の自立心を育てるB社の事例

B社は生産量2,000石クラスの地方酒蔵であり、社員は10名弱、その他に瓶詰・ラベル張り・出荷を担当するパートとアルバイトが4名、当時をはじめ季節労働者により営まれています。「人の能力には格差はない」という考え方から、それぞれの長所を生かした責任を持たせ、自立心を育てることが人材育成の要と考えています。社員自身も自ら意見を忌憚なく述べ合える環境を作っています。こうした自らの言葉で語る力をつけ、営業担当者にも酒造りを体験させており、自信を持って商品を販売することにつながっています。

 

いかがでしょうか?酒造業ではそれぞれの理念や考え方のもと、新しい人材教育を常に実施しており、それが持続的に成長する企業体質を作り、2年後3年後を生き残る酒造業を造っています。皆さんもこの機会に、自社の人材教育について考えてみてはいかがでしょうか?

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