酒造業のためIoT講座

 2019.07.01  株式会社アウトソーシングテクノロジー

酒造ビジネスに着々と根付きつつある「IoT(Internet of Things:インターネット・オブ・シングス)」。最近では「○○酒造がIoTを活用して、酒造工程におけるデータ活用に成功」といったような、酒造ビジネスにおけるIoT活用事例をよく耳にするようになりました。実際に大手酒造メーカーを始め、中小酒蔵においてもIoTを使った取り組みを実施しているところが多く、酒造という「伝統」とITという「最新技術」が融合することによって、新しい付加価値を生み出している成功事例も少なくありません。

本稿では、酒造業を営んでいる読者に向けて、IoTの基本から酒造業における活用事例までご紹介したいと思います。

iot

IoTとは?

IoTというのは「モノのインターネット」といわれる、従来から生活に浸透しているモノをインターネットに接続することで、モノ自体が提供する価値を高めたり、それらのデータを活用してビジネスに貢献させたりする取り組みや技術の総称のことです。

たとえば身近なところでいうと「スマート家電」がIoTに該当します。インターネットに接続された冷蔵庫は、付属のパネルからネットスーパーの注文をすることができますし、内部に取りつけられたセンサーから庫内の鮮度状況を確認することもできます。

IoTを理解する上で重要なポイントは「モノがインターネットに接続されている」ことに加えて、「モノにセンサーが取り付けられている」ということです。モノに取り付けられたセンサーからさまざまなデータを収集し、それを分析することで多彩な情報を読み取ることができます。

酒造業にとってのIoTとは?

IoTはインターネットに接続されセンサーが取り付けられているモノばかりを指すわけではありません。近年特に注目されているIoTが、あらゆる場所にセンサーを取り付け、各センサーからデータを収集・分析して情報としての価値を作り、その情報を活用してあらゆるコトを最適化するためのシステム(仕組み)です。

ドイツ政府主体となって推進されている「Industry 4.0(インダストリー4.0)」は、工場内のあらゆる場所や設備にセンサーを取り付け、各センサーを収集・分析して情報を生み出し、生産設備を中央からコントロールすることで、製造の完全自動化を目指す取り組みです。こうしたIoTを活用した自動化への取り組みは、現在世界中で、あらゆる産業で取り組まれています。

酒造業にとってのIoTもIndustry 4.0のように酒造工程の自動化を目指したり、目には見えにくい情報を可視化したりするためのものだと言えます。

たとえば、宮城県の老舗清酒メーカーでは、日本酒の酒造工程にセンサーなどのIoTを導入し、データの自動計測と遠隔確認を可能にするための実証実験を開始しています。

実証実験では、酒造タンク内に温度センサー、CO2濃度センサー、IoTカメラを設置し、ろ過室には温湿度センサーをそれぞれ設置しています。センサーから取得したデータとカメラ映像によって もろみの状態を遠隔確認できるようにし、データを作業記録と合わせてクラウドに蓄積しています。これにより、従来は経験で受け継がれてきた酒造りのノウハウを数値的に表し、分析することで酒造作業の効率化と日本酒の品質向上、技術伝承の促進の実現に向けて効果検証を行っています。

また、新潟県の酒造メーカーでは、仕込み部屋と麹室の温度・湿度、仕込みタンク内の温度を定期的に測定し遠隔地である本社での情報を把握するためにIoTを活用しています。これにより良酒ができた時のもろみの発酵温度変化を把握することで温度管理ノウハウの共有につなげ、品質向上に貢献しています。

 

上記の事例は、あくまで酒造業におけるIoT活用事例の1つです。あらゆる産業で注目されているように、IoT活用の可能性は無限にあり、豊富なアイディアによって酒造業でも様々な活用が期待されています。

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酒造業におけるIoT活用例

具体的に、酒造業ではどういったIoT活用がされているのでしょうか?ここではいくつかのIoT活用例を確認してみましょう。

1. 酒造工程の情報を数値化

IoT活用の本質は、従来数値化が難しかった情報をデータとして表すことで、新しい発見ができたり、情報に基づいた経営や改善ができたりすることだと言えます。酒造工程においても同様であり、センサーやカメラなどを用いて情報を数値化することによって、酒造状況をリアルタイムに確認し、常に適切な指示を出すなどの活用ができます。

2. 技術伝承のために

酒造ノウハウの多くは杜氏や管理責任者の「暗黙知」として集積されています。従って、もしも杜氏や管理責任者が離職するとその暗黙知は完全に失われることになり、適切な技術伝承ができずに品質に大きな影響が出てしまいます。暗黙知を体系立ててノウハウ化するのは難しく、技術伝承に多大な時間とコストを費やすことになります。実際に技術伝承に深刻な課題を感じている酒蔵は多いでしょう。しかしこれもIoTがあれば解決が期待できる課題です。酒造工程におけるあらゆる作業を完全に数値化することによって、自然と杜氏や管理責任者の暗黙知を表面化・数値化することができ、技術継承に大いに役立ちます。

3. 酒造に関する帳簿作成・管理の効率化

酒造業では他の産業と違って、酒税などの特別な帳簿作成・管理が多く、大きな負担になっているケースが珍しくありません。これを効率化できるのもIoTの魅力です。IoTによって収集・分析したデータを用いて業務システムと連携することで、帳簿作成・管理を半自動化し作業効率を大幅に向上させることができます。

4. もろみの温湿度管理の作業負担軽減

日本酒造りにおける重要な工程が「もろみの仕込み」です。酒蔵では温湿度管理、各種データの定期的計測、発酵状況の目視確認など人手を要するさまざまな作業が必要です。これは各酒造工程の中でも作業負担が大きくなっている工程の一つと言えるでしょう。IoTを活用すれば もろみの仕込みにおける作業効率化の余地が多く、作業負担を軽減できることでより少ない人員で正確に酒造りに取り組むことも可能になります。

IoTをもっと身近に感じよう!

いかがでしょうか?酒造業においてもIoTは大変魅力ある技術であり、これからの時代では中小酒蔵でもIoTを活用し、酒造工程や経営活動の最適化を図ることが当たり前になっていきます。伝統的な酒造工程と最新技術であるIoTは、一見して相反する関係にも思えますが、実際は「酒造×IoT」の取り組みが全国各地で行われています。皆さんもこの機会に、IoT活用によってさまざまな経営課題の解決に向けて、IoTの効果について考えてみてはいかがでしょうか?

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