酒造業者なら知っておきたい地域活性化の取り組み

 2019.09.02  株式会社アウトソーシングテクノロジー

酒造業における、国内出荷量(課税移出数量)は平成11年をピークに徐々に減少し、平成29年時点ではピーク時の9割以下に低下しています。また、成人一人あたりの酒類消費数量も平成4年をピークに減少しており、現在ではピーク時の8割以下にまで低下しているので、酒造業は依然として苦しい戦いが強いられている状況です。

酒類等製造免許場数が年々減少していることからも、酒造業では今後大規模なイノベーションが起きない限り、市場成長は難しいものと言えます。ただし、こうしたマイナスなニュースだけではないのが酒造業です。

日本産酒類の輸出動向は平成20年に比べて平成30年では2倍以上に増加していますし、特定名称酒の出荷数量は堅調に伸びています。また、多角化への取り組みも加速しています。そして、酒造業者と地方自治体がタイアップした“地域活性化”の取り組みにより、元気を取り戻しつつある酒造業者も確かに存在します。

本稿では酒造業者が行っているさまざまな取り組みの中でも、地域活性化に焦点をあてて話を進めていきたいと思います。

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地域活性化とは?

地域活性化(地方創生)とは、各地域がそれぞれの特徴を生かして、自律的かつ持続的で魅力ある社会作りを行うことです。日本では、工業化の進展やサービス産業の増加により、地方から都市への人口流入が長年にわたって進み、その結果地方の過疎化が問題になっています。

今後は、少子高齢化や人口減少のあおりを受けて過疎化はさらに加速すると考えられています。そこで、平成27年から総合戦略として政府一体となり、地域活性化に取り組むことになっています。地方において安定した雇用を創出したり、それによって地方への人口流入を促したり、それに合わせた若年世代への支援を強めることで、人口減少に歯止めをかけて成長力を確保しようというのが、地域活性化の本質であり狙いです。

ただし、酒造業における地域活性化は上記のように難しく考える必要はありません。こうした地域活性化は一酒蔵だけで実現できるものではなく、地方自治体とそこに所属する多数の企業が一丸となることで初めて達成するものとして捉えられています。

従って、酒造業者が独自の地域活性化を掲げる際は、「酒を主体としてさまざまなイベントを実施して地域のブランド化を図ったり、今までよりも地域を少し元気にしたり、それに伴い自社商品を広める」という程度の目的で実施する方が、肩の力が抜けて地域活性化を成功させることができるでしょう。

 

酒造業者の地域活性化事例

それでは、実際に地域活性化に取り組んだ酒造業者の事例をいくつかご紹介します。

1. 東久留米市における「城島酒蔵びらき」

福岡県東久留米市にある酒造会社の発案により久留米市・城島町に観光客を呼び込むことを目的とした「城島酒蔵びらき」というイベントを平成7年より開催しています。昨年、第25回目の開催を迎え来場者数は過去最高の11万5,000人もの人々が当イベントに足を運んでいます。

年々拡大していることでリピート客も新鮮さを感じており、交通機関とタイアップし最寄り駅からの往復乗車券と飲み比べ割引券がセットになった記念切符の発売や最寄り駅をスタートとしたウォーキングイベント等も開催され、集客拡大を常に図っています。

また、このイベントではSNSを積極的に活用することで、リピート層との深い関係づくりに取り組んでおり、年々リピート客を増やすための戦略を実施しているのが大きな特徴です。

こうした酒イベントは特定名称酒の人気情報から高い注目を集めており、フードフェスなどが多方面で開催されていることから、強い集客効果があります。最初は小さなイベントでも年々規模を拡大していくことで、将来的には地域活性化に大きく貢献するという良い見本になることでしょう。

2. 北海道における「パ酒ポート」

酒造業者の地域活性化事例として有名なのが、北海道広域道産酒協議会が実施している「パ酒ポート」というイベントです。株式会社JTB 北海道コミュニケーション営業部MICEソリューション課を事務局として、日本酒・ワイン・ビール・ウイスキーという酒類の垣根を超えて、北海道産酒の消費拡大や地域活性化を目的に、「パ酒ポート」とう酒蔵をめぐるスタンプラリー帳を発行しています。

1冊500円(税別)で市販されているこのスタンプラリー帳は、道内20か所以上の酒蔵訪問を通じて、北海道内の周遊滞在を促す取り組みの1つとなっています。8か月間の期間内に押印したスタンプの数によってさまざまなプレゼントに応募でき、各酒蔵をはじめ道内の日帰り入浴温泉や、ガソリンスタンド等での特典を受け取ることも可能です。

この取り組み開始(平成24年7月)から8か月間で5,000部を完売し、翌年には最終的に8,000部が完売しました。「パ酒ポート」の発行後は酒蔵を訪れる顧客層に変化が生じたそうで、酒への興味が薄かった人々の利用や休日の手軽な過ごし方として普及しているようです。

この取り組みでは「パ酒ポート」という商品をただ販売するのではなく、購入者限定の優待企画を展開するほか、購入者同士の交流機会を設けることで点と点を結んだ多面的な試みが図られています。

これらの取り組みは現在では、北海道内外へと進化を続け、現在までに「パ酒ポート北海道」、「青函パ酒ポート」、滋賀県の「パ酒ポート近江の地酒版」、「パ酒ポート新潟」などへと拡大しています。

参考資料:株式会社日本政策投資銀行 地域企画部「酒蔵を各とした地域活性化~高級清酒需要の持続的伸長に向けて~

酒造業のための経営指針ガイド
三酒の神器 パンフレット

地域活性化へ取り組みを成功させるために

上記のように、酒造業者と地方自治体や民間企業がタイアップして実施される地域活性化事例はたくさんあります。それらの事例の中には強力な集客効果をもっていたり、商品のブランディングを強化する良い機会になっています。

では、酒造業者が地域活性化に取り組むにあたり、成功するためのポイントとは何でしょうか?

1. 志は大きく、規模は小さく(小さく始めて大きく育てる)

大手酒造業者が実施している地域活性化事例でない限り、最初の取り組みはごく小さなものです。前述した「城島酒蔵びらき」も最初は小さなイベントでしたが、25年という歳月で11万人という大イベントにまで成長しています。地方の中小酒蔵が地域活性化について考えるとき、志を大きくもちつつも、無理のない範囲で小さく始めることがとても大切です。投資対効果が見えづらいことから小さく始めるのが、やはり無難と言えるのです。規模を徐々に大きくしていくことで、その取り組み特有の伝統を育てつつ、高い集客効果などをもつようになります。

2. 肩の力を抜いて協力体制をもつ

「一世一代の大勝負」といった具合に取り組む地域活性化の多くは、想定するような成果を得られません。やはり肩の力を抜いてリラックスした状態で、地方自治体や他の酒蔵と協力体制を取りつつ取り組んでいくことが良いでしょう。お客様の多い少ないに関わらず、心のこもったコミュニケーションを楽しむことに集中することが重要です。

地域活性化は自社だけでなく、地域にとってもプラスの効果を生み出します。そのため、これらの取り組み賛同してくださる企業や人なども増えてくる特徴があります。

この機会に、地域活性化を主体として戦略を考案してみてはいかがでしょうか?

参考資料:国税庁課税部酒税化「平成31年3月 酒のしおり

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