酒造業の現状と課題

 2019.04.01  株式会社アウトソーシングテクノロジー

本稿では酒造業の現状と課題について解説し、加えて酒造を営む会社が今後取るべき戦略について考えていきます。

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酒造業の国内事情

まずは、データから酒造業の現状を読み解いていきましょう。

国税庁課税部酒税課が毎年発表している「酒のしおり」によると、日本国内の酒類販売(消費)数量は1996年の966万KL(キロリットル)をピークに、2016年には841万KLまで下がっており、1996年比87.1%の数値となっています。

出典:国税庁、酒のしおり(平成30年3月)

 

一般的に酒造業は、人口の推移に影響を受けやすい業種として知られています。日本国内の人口構成は高齢化の一途を辿っており、飲酒習慣のある20代から60代の消費に依存します。この消費量が下降する原因を探ってみると、70代の人口増加および20代~30代の人口減少が少なからず影響しています。

それ以外にも飲酒習慣を持つ20代~30代の成人人口減少に加えて、いわゆる「酒離れ」が進んでいることにより消費減少に拍車がかかっています。ちなみに年齢階層別の飲酒習慣について確認すると、成人男性は60代が54.0%でピークであり、70代男性では39.5%と落ち込みます。また、20代ではわずか14.5%、30代でも33.2%にとどまっています。そして、女性は男性の飲酒習慣に比べて概ね1/3程度になります。

また、成人一人あたりの酒類消費数量の観点で確認すると平成4年の101.8Lをピークに平成28年には80.9Lと20%近く減少しています。つまり一人当たりのお酒を飲む量が減っています。しかし、直近10年で見てみると横ばいが続いている状態です。 

このような傾向は酒類の一部である清酒においても同様であり、清酒の販売数量は1975年の167万KLをピークに下降を続け、2016年には53万KLまで減少しています。その影響もあり、清酒の製造免許場数は年々右肩下がりが続き、経営難や人材不足によって廃業に追い込まれる酒蔵が増えていることも事実です。

これらのデータから酒造業界の現状を読み解くと、酒造業は非常に困難な状況に立たされていると言っても過言ではありません。

酒類でその傾向に違いはあるのか?

前述したとおり酒類が厳しい状態に立たされていることは間違いありません。しかし、お酒には清酒や焼酎、ビール、リキュール、ワインなどなど様々な種類のものが存在し、それぞれ特徴や傾向などはあるのかという疑問が湧いてきます。 

経済産業省が「一世帯あたりの年間品目別支出金額」というテーマで調査データを公表していますのでそのポイントをご紹介します。

一世帯あたりの年間品目別支出金額の変化においてビールが圧倒的に下降曲線を描いており、20年前は1世帯あたりのビールの支出は年間3万5000円弱であるのに対して2016年には1万2000円と1/3にまで減少しています。これは発泡酒やチューハイ、カクテル、ビール風アルコール飲料に押されていることによるものとみられています。その一方で清酒や焼酎、ワイン、ウィスキーといったものは微小な低下傾向もしくは横ばいという状況となっています。

しかし、一般世帯が酒類に消費する金額は1996年では54,000円程度であったのに対して、2016年は41,000円と落ち込んでいます。

また、家庭に加えて、飲食サービス業における居酒屋でもお酒離れの傾向が確認できていることから、残念ながら家でも外でもお酒離れの傾向が見られると言えるでしょう。

参考資料:経済産業省「飲食関連産業の動向

お酒の消費量が減った主な要因は結局何なのか?

それではなぜ酒の消費量は下降しているのでしょうか。それは前述したとおり国内における人口構造の変化に加えてニーズの変化が大きく起因しています。

昨今ではオリンピックを目前に控え消費者は健康志向になっており、一昔前の同僚と居酒屋に立ち寄る光景よりもジムで一汗かいてから帰宅する社会人も多くなってきています。また、バブル崩壊以降の交際費圧縮、飲酒運転罰則強化、働き方改革による充実したワークライフバランスなども少なからず要因に寄与しています。

酒造業のための経営指針ガイド
三酒の神器 パンフレット

酒造業界における3つの光明

もちろん、これらの置かれている状況を酒造業界の企業経営者や酒造業に籍を置く方々は重々承知していることでしょう。特に代替わりした世代の経営者は、現状打破のためにいろいろと模索している最中ではないかと思います。

そのような中で悪い話だけではありません。酒造業界にもいくつかの光明が差しており、そこに収益回復/収益拡大のヒントがあると考えられます。ここでは清酒に焦点を絞りポイントをご紹介いたします。

消費者が高級品質志向にシフトしている

清酒市場で特に顕著に表れている光明が、消費者が清酒に対して高級品質を求めるようになっているということです。清酒の販売量が減少していると前述しましたが、2010年を境に、特定の清酒名称酒に関しては増加傾向にあります。 

特定名称酒とはそれ以外の清酒と比較して、原料や製法によりこだわった商品カテゴリーのことです。価格もやや高めに設定されます。これらのお酒が好調なことから清酒市場においての一つのトレンドとして「高級品質志向」にシフトしていると考えてよいでしょう。

2018年6月には、日本酒の適正価格を改めて問う試みが黒龍酒造株式会社(福井県)によって実施されました。 

一般的に清酒の小売価格は一般的にメーカーが決定しますが、この取り組みでは「入札」という形式で、価格設定を卸業者や酒販店などのバイヤーに委ねました。その結果、最終的な入札価格が最初の3倍に跳ね上がるなど、酒造業界における清酒の価値は酒造会社が考えている以上に高いことが実証されています。 

事実、ワイン市場では1本100万円をこえるものもある中で、清酒市場の高価格市場はまだまだ未発達だと言えます。今後も継続して高級品質志向が進めば、特定名称酒における市場は酒造業界にとってビックマーケットに成り得る可能性を秘めていると言えるでしょう。もちろんこれらの傾向は清酒だけに限ったことではなく酒類全般に言えるでしょう。

グローバルマーケットの拡張

国内市場が低迷するなか、酒造メーカーにとってグローバル展開(海外輸出)は重要なテーマの一つでしょう。関税局が発表した2017年の貿易統計に目を向けると、2017年の清酒の輸出数量は23,482KLで前年比19%増、金額は186億7,918万円で20%近く増えています。これはいずれも過去最高であり、数量および金額ともに8年連続で過去最高を更新しています。 

海外での市場規模は現在はワインなどに比べてまだまだ小さいものの着実に増えていることを鑑みると大きなチャンスと言えるでしょう。

AIおよびIoT活用による酒造コストの低減

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of  Things:モノのインターネット)は、現代ビジネスを代表する革新技術の1つです。伝統的な製造方法を持つ酒造業界において、こういたIT技術の最先端はまったくの無関係だと考えられる傾向にあります。

しかしながら、AIおよびIoTは酒造業界にも大きなインパクトを与える技術になると言われています。 

AIというと、ロボットや業務の自動化、あるいは産業機械の自働制御などを想像しがちですが、その本質は「特定のデータを自動的に分析し、次の行動として最良のものを提案する」という技術です。人間では実現不可能なほど膨大な量のデータを瞬時に処理し、その結果から最善策を人間に提案するようなAIが各業界で活躍しています。 

そしてIoTは、ネットワークに接続されたセンサーから様々なデータを採取し、サーバーに集約することでモノ自体の現状を莫大なデータから正確に把握します。たとえば橋梁に多数のセンサーを取り付けることで、自動車による振動データを収集したり、老朽化データを収集したりすることで問題が発生する前に保守/メンテナンスを適切なタイミングで実施できます。

ここまでの説明ですでにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。AIとIoTを活用することで、各酒造工程における商品の状態をデータとして収集し、それをAIに分析させることで、次の工程へ移るベストなタイミングを標準化したり、酒造工程管理を半自動化したりすることが可能になります。 

これによって酒造工程にかかる世代交代や人手不足など深刻化する問題を解決しつつ、商品品質を一定に保つ、もしくはより良い商品を作るためのアイデアを得ることが可能になります。

すでに実際にAIやIoTによる酒造に取り組んでいる酒造会社もあり、ほぼ人手無しでの酒造を実現しているところもあります。 

まとめ

今回は酒造業が置かれている現状に関してご紹介しました。国内においては厳しい状況は今後も続くことが予想されていますが、ご紹介させていただきました代表的な3つの光明を着実に取り入れることによって生き残りから成長曲線を描くことも可能であると言えるでしょう。 

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